背の眼
作家の道尾は、ある山奥の村に行く。
白峠村という、変わった名の村だ。
滝から落ちてくる、清らかな川のそばで、不意に「オグロアラダロゴ……」
と、いう声が聞こえてきた。
その声に、恐怖を覚え、予約していた宿を慌てて引き払い、家に戻ってしまう。
だが、どうしてもその恐怖が癒えないまま、「心霊探究所」を開いている友人「真備」の元へと訪れる。
研究所ではなく、なぜ探究所なのか疑問に思いつつ、霊など信じてはいないが、それを見極めたいという、変わり者の真備に自分の体験を語る。
そして、それは確かに霊かもしれないとも真備はいい興味を持ったようだった。
背が高く美しい、女性に間違われるほどの美貌を持った男だが、一風変わっていて、助手の北見凜という女性と共に、道尾を連れて白峠村へ行くことになった。
真備のところへ相談に来た手紙と、心霊写真らしいものには、背中に眼のようなものが映っている。
道尾は、昨年白早川というあの川で無惨に殺された少年のことを知る。
そして、その背中に映った目が、彼のものであるという科学的な証拠を見せられ、いよいよ霊体験だったのだと思い知る。
ホラーである話に思える出だしだが、実は上質なミステリー仕立てになっている。
宿の、人のいいご主人歌川が、客へのサービスに飾ってくれる東海道五十三次の浮世絵、天狗の面を彫っていたという、亡くなった少年の祖父。
山道にはそぐわない、白い服の女性。
最初の少年に続いて三人も行方不明になったという、忌まわしい荘厳な山。
背景はばっちりで、まるでその山に自分もいるかのような詳しい描写にちょっと背筋がぞっとする。
そして、真備という不思議な男の過去。
そばに常にいる、北見という女性。
霊体験を思い切りしてしまったことで、ちょいびびり気味な道尾。
後半は、流れるようにいろいろな謎が解き明かされる。
なるほど、そうか、というちょっと「盗まれた街」にも共通するような原因と結果。
悲しい、胸に詰まるような寂しさの漂う物語の中で、道夫、真備の友情、そして北見の想いが重なり合って、なんだかとてもいい作品でした。
今後もこの三人、いい感じでシリーズを続けてくれそうで、期待してしまう。
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