毒魔
「この国は世界中から嫌われている」
ショッキングなほど、自国に対して醒めた視線がすごい。
バスターミナルで、一瞬の間に百名以上の人間が死んだ。皆、血に染まり、あっという間に、しかしものすごい苦痛の形相で死に至っていた。
これはテロなのか、何かのガスが撒かれたのかと調べを進めるが、ガスではなくなにかの菌であることが分かった。
しかも、じきに感染の心配はないという結果が出た。
もし、体中から血を流して死んでしまうというエボラ熱ならば、もっと長い潜伏期間とあとあとまで、感染のおそれが残るはずなのに。
どうやら遺伝子操作を加えて、死に至るスピードを調整しているらしい。
問題は、「これが始まりで、次の日曜に終わる」という予告メッセージが届いたことだ。
FBIやCIAは、目の色を変えてアラブ系テロリストたちを探し、州警察が来て、バスターミナルにいて感染をしなかった人々は、町の一角に足止めをされ・・・。
これはノンフィクション作家フランク・コーソのシリーズもので、彼は今回もこの事件に関わってしまう。
というより、自ら飛び込んでしまうのだが。
世捨て人のような生活をして、ボートに住んでいるコーソは、事件の本質に迫っていくことで、暗澹とした気分にすらなる。
テロリストは、今注目されている人種ばかりではない。
「この国は世界中から嫌われている」
そうして、他所での戦争を行い、自国は安全に保っていたはずの巨大国家は、いつの間にかその懐に、たくさんの「憎しみ」を誘い入れてしまっているのかもしれない。
幾度も幾度も出てくるこの言葉は、おそらく作者が日々考えていることなのかもしれない。この部分だけが、やけにリアルだ。
火種はあちことにあって、それはこの巨大国家に限らず、地球規模で人々の心に影を落としているのかもしれない。
ただ、理由はどうれあれテロを起こしていい理由はないし、それに巻き込まれて罪なく死んでいった人々を思えば許せない行為には違いない。
それでも、犯人たちの姿が、ひどく哀れに思えるのは――仕方ないのだろうか。
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