ショーシャンクの空に
これほどついてない男はいないかもしれない。
妻に浮気をされ、憤りのあまり殺してやりたいとまで思ったもののそれを諦めたというのに、無実の罪でショーシャンク刑務所に入れられた男、アンディ。
罪は重く、一生をその刑務所で終えなければならないのだ。
目線はモーガン・フリーマン演じるところのレッドであり、彼は新しい受刑者が入ってきた日、最初に泣き出すのはアンディだろうと仲間と貴重な煙草を賭ける。
だが、アンディは静かだった。
彼は、若くして銀行の副頭取を務めた男で、刑務所に入ってなお、一種独特な雰囲気を持つ、寡黙な男だった。
刑務所では慣れない仕事をさせられ、刑務官たちは彼らを人として扱わず、食事にはウジ虫が混じっているほど悲惨だ。
その上、アンディをつけ狙って、彼をレイプする男達の存在が、アンディを壊しかけていた。毎日を戦い、傷だらけで過ごしている男を、レッドはどうしてやることもできないが、それでも彼らの間には確実に友情が芽生えていく。
やがてアンディのかつての仕事で得た知識が、刑務官達を救う手だてとなる。
金銭面でのあらゆる問題を解決してくれるアンディは、貴重な存在になっていくのだ。
所長は、彼を使って二重帳簿を作り、私腹を肥やして満足している。
ついていない男――アンディは自分をそう思っている。
本当に若かりし頃殺人を犯してしまったレッドからすれば、確かにそう思える。
そんな中でも、自分をかろうじて見失うことなく生きようとするアンディは、レッドにも好ましい男として存在し始める。
レッドはいう。
「希望などもってはいけない」と。
幾度も、仮出所の審理に駄目を出され続けているレッドは、それでも出たいと思い続けていたはずだ。
けれども、アンディが20年、レッドが30年という長きにわたって刑務所の塀に囲まれた生活に慣れてくると、今度は外の世界が怖くなるのだ。
まるで浦島太郎のように、世間は変わっている。
そんな中にいて、アンディはなおも希望を失わない。
アンディは、ある日刑務所の狭い部屋から煙のように消え失せた。
石の壁に囲まれたそこにはなにも変わったところはないというのに。
ただ、レッドが手に入れて渡した女優の大きなポスターが貼られているだけ。
アンディは、脱獄に成功したのだ。
レッドは、もう何度目になるか分からない仮出所審理の審理官たちを前に、「こんなことは時間の無駄だ。仮出所など、しなくてもいい。もう一度、自分が殺してしまった相手にあって、話がしたい。だが、それはもう無理だ」という。
これまでへらへらと、「いつでも社会復帰できますよ」といっていたレッドは、今はもう塀の外へ出ることに、不安のほうが勝っていたのだ。
それでも、残された仲間たちは風のように鮮やかに脱獄を果たしたアンディの話をする。
決して諦めず、小さな登山用のロックハンマーひとつで、僅かの土をこっそりとズボンの裾から落としながら、アンディは20年間も自由になることに向かっていたのだ。
ラストがいい。
頑強な塀の中の、陰鬱な世界とは打って変わったメキシコの真っ青な海と、金色の砂。
憎き所長と横暴で凶暴な刑務官の罪を見事に暴き、アンディはかつてレッドに語ったように海にいた。
長き物語は、この一場面で爽快にエンディングを迎える。
希望――
それを持ち続けるのは難しい。
それを諦め、捨ててしまうのは簡単だ。毎日を惰性に流されればいい。
けれども、人は成し遂げようと思ったときには、必ずそれを達成することができるのかもしれない。
そんな希望を忘れてはならない、ついてないと人生を投げるのではなく、そこから脱出し、なお夢を叶えることができるんだよ、とアンディは教えてくれた気がした。
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