« 2008年2月 | トップページ

2008/07/07

百器徒然袋 雨  京極夏彦

 榎木津礼次郎の憂鬱

  ああ、あああ、愉しすぎて死にそうだ!!!
 最初は京極先生の本って難しい…と、思いこんでいた。
 やがてはまってしまうと、たしかに難しいがキャラ設定が抜群だぞ、などと思い始め、やがてとんでもない面白い作家先生なのかもしれない、と理解しはじめた。

 おもしろい。つーか、愉しすぎる。
 天性の躁病質である榎木津礼次郎が中心で、まわりに人々はほとんどが彼の従者。彼にいわせれば下僕。なんと、探偵事務所へ訪れた依頼人まで下僕になってしまうのだ。
 しかも、あの叱られたら大人でも失禁しかねないほど怖い、という中禅寺秋彦でさえ、いやいや騒動に巻き込まれてしまう。いや、巻き込まれるっていうか、ほとんどおもしろがって参加してるだろう? とつっこみをいれたくなるほど彼も愉しそうなのである。

 物語は実は3本入っており、最初の1本が「榎木津礼次郎の憂鬱」なんだけど、どうして3本も…。
 明らかに3冊できるじゃないの、と思う程分厚いけど、先生の本にしてはそれほどでもない。(笑)
 
 元子爵の息子で、しかもその父親は経済的にも成功しており(要は金持ち)、財界では相当な人物である上に榎木津自身は帝大(今の東大?)卒業。
 しかも容姿端麗。まるで人形のように美しい顔立ちと長身。
 でもなぜか強くて、そして性格はまるで破綻している。
 他人の過去が見え、ほとんどその能力だけで探偵業を選んだだけあって、依頼人の話も聞かなければ捜査も聞き込みもしない。できれば依頼も断りたい一心。
 誰彼かまわず罵声をあびせ、貶してくさしてばかりである。
 
 まわりに集まってしまう「下僕」たちは、なんといわれようと彼のそばにいたいらしく、文句を言ったり面食らったりしながらも惹かれているらしい。

 今回は、あのおっかない根暗そうな陰陽師、中禅寺秋彦が彼に仕切られて、ある男達に制裁を加えるというおはなし。
 そんな話には乗りたくない、といいながら自らが洗って干していた釜に目をやり、
「あ、悪趣味なことを考えてしまった」
 と呟く。
 内容もなにも分からないにも拘わらず、それだ、それでいこうじゃないか!とノリまくる榎木津。
 こんな明るい二人の話が読めるなんて。
 でもこれ、「榎木津礼次郎の憂鬱」ではなくて、「下僕達の憂鬱」じゃないのかしらん? 京極堂さんはあきらかに楽しんでいる風だし…。
 
 長い話に疲れたら、ちょっと骨休めにいいかも。いや、短くはないけど。

| | コメント (0) | トラックバック (1)

« 2008年2月 | トップページ