百器徒然袋 雨 京極夏彦
榎木津礼次郎の憂鬱
ああ、あああ、愉しすぎて死にそうだ!!!
最初は京極先生の本って難しい…と、思いこんでいた。
やがてはまってしまうと、たしかに難しいがキャラ設定が抜群だぞ、などと思い始め、やがてとんでもない面白い作家先生なのかもしれない、と理解しはじめた。
おもしろい。つーか、愉しすぎる。
天性の躁病質である榎木津礼次郎が中心で、まわりに人々はほとんどが彼の従者。彼にいわせれば下僕。なんと、探偵事務所へ訪れた依頼人まで下僕になってしまうのだ。
しかも、あの叱られたら大人でも失禁しかねないほど怖い、という中禅寺秋彦でさえ、いやいや騒動に巻き込まれてしまう。いや、巻き込まれるっていうか、ほとんどおもしろがって参加してるだろう? とつっこみをいれたくなるほど彼も愉しそうなのである。
物語は実は3本入っており、最初の1本が「榎木津礼次郎の憂鬱」なんだけど、どうして3本も…。
明らかに3冊できるじゃないの、と思う程分厚いけど、先生の本にしてはそれほどでもない。(笑)
元子爵の息子で、しかもその父親は経済的にも成功しており(要は金持ち)、財界では相当な人物である上に榎木津自身は帝大(今の東大?)卒業。
しかも容姿端麗。まるで人形のように美しい顔立ちと長身。
でもなぜか強くて、そして性格はまるで破綻している。
他人の過去が見え、ほとんどその能力だけで探偵業を選んだだけあって、依頼人の話も聞かなければ捜査も聞き込みもしない。できれば依頼も断りたい一心。
誰彼かまわず罵声をあびせ、貶してくさしてばかりである。
まわりに集まってしまう「下僕」たちは、なんといわれようと彼のそばにいたいらしく、文句を言ったり面食らったりしながらも惹かれているらしい。
今回は、あのおっかない根暗そうな陰陽師、中禅寺秋彦が彼に仕切られて、ある男達に制裁を加えるというおはなし。
そんな話には乗りたくない、といいながら自らが洗って干していた釜に目をやり、
「あ、悪趣味なことを考えてしまった」
と呟く。
内容もなにも分からないにも拘わらず、それだ、それでいこうじゃないか!とノリまくる榎木津。
こんな明るい二人の話が読めるなんて。
でもこれ、「榎木津礼次郎の憂鬱」ではなくて、「下僕達の憂鬱」じゃないのかしらん? 京極堂さんはあきらかに楽しんでいる風だし…。
長い話に疲れたら、ちょっと骨休めにいいかも。いや、短くはないけど。
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